実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)
実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)@テアトル新宿
監督・製作: 若松孝二

キャスト
遠山美枝子☆坂井真紀
永田洋子☆並木愛枝
森恒夫☆地曵豪
坂口弘☆ARATA
坂東國男☆大西信満
吉野雅邦☆菟田高城
加藤元久☆タモト清嵐
加藤倫教☆小木戸利光
重信房子☆伴杏里
塩見孝也☆坂口拓
牟田泰子(あさま山荘管理人)☆奥貫薫
さらぎ徳二☆佐野史郎
金廣志☆RIKIYA
植垣康博☆中泉英雄 / 青砥幹夫☆伊達建士
伊藤和子☆一ノ瀬めぐみ / 寺林真喜江☆神津千恵
山田孝☆日下部千太郎 / 加藤能敬☆高野八誠
寺岡恒一☆佐生有語 / 大槻節子☆藤井由紀
金子みちよ☆安部魔凛碧 / 杉崎ミサ子☆奥田恵梨華
山崎順☆椋田涼 / 進藤隆三郎☆粕谷佳五
行方正時☆川淳平 / 中村愛子☆木全悦子
小嶋和子☆宮原真琴 / 尾崎充男☆鈴木良祟
前沢虎義☆辻本一樹 / 山本順一☆金野学武
山本頼良☆金野明日華 / 山本保子☆比久廉
岩田平治☆岡部尚 / 早岐やす子☆田島寧子
向山茂徳☆黒井元次 / 奥沢修一☆玉一敦也
ナレーション 原田芳雄
【ストーリー】
ベトナム戦争、パリの5月革命、中国文化大革命など、世界中が大きなうねりの中にいた1960年代。日本でも学生運動が熱を帯び、連合赤軍が結成された。革命戦士を志した坂口弘(ARATA)や永田洋子(並木愛枝)ら若者たちは、山岳ベースを設置し訓練をはじめる。厳しい訓練に追い詰められ、メンバーによる仲間同士の粛正が壮絶を極めていく。
【感想】
あさま山荘事件が起きた1972年当時私は、中学1年生。
記憶に残っているできごとはふたつしかない。
ひとつめは事件そのものについて。
テレビで放映された、あさま山荘に大きな鉄球が振り子のようにぶつけられ、破壊される光景。
小学二年生だった弟は、学校のテレビで授業放棄した先生といっしょに見たそうである。
あさま山荘事件といえば鉄球がまず思い出される。
もうひとつは個人的なできごと。
事件直後の春休みに、学校の行事でスキー教室に行った。
上野から貸切の特急電車に乗ったのだが、生徒ばかりの車両に親子連れ4人が紛れ込んで勝手に座った。
そこで、この電車は貸切だからと注意すると、父親から返ってきた答えは
「そんなことはない。なに言ってるんだばかやろう。お前みたいなのが連合赤軍になるんだ。」
車掌の検札で、この親子が別の車両に移らされたのはいうまでもない。
映画を見るまえにこの話を友人にしたら
「よっぽど憎憎しい言い方をしたんでしょうね。」
わたくしの大人観は、連合赤軍事件の影響を大きくうけて形成されたのである。
大学に通ったのは70年代後半だった。
学生運動は下火になってはいたが
大学の構内には立て看板がたちならび、民間人がはいりこむようなところではなかった。
現代のように大学の構内にキャンバス持って絵を書きにきている人なんかいなかった。
内ゲバも起き、事件後の教室に革マルの活動家があじりに来たこともある。
映画に出てくるブントなんてセクトもあった。
説明が出ていたが、それでもブントって何なのかわからず。
で、映画である。
感じた、もしくは気が付いたことはみっつほど。
一つ目。
森恒夫の言っていることはさっぱりわからなかった。
彼らのやっていることを見ていて、一番似ているのは何かを考えてみた。
一番似ていると思ったのは戦前の軍部の軍国主義。
人民を解放するための革命を標榜する彼らのやってることは反革命の権化のはずの軍国主義と同じ。
規模は小さく稚拙だけれど。
彼らにとっての理想や正義が凄絶なリンチを生み出す。
軍部のふりかざした正義が焼け野原や原爆ドームを生み出した。
結果も同じ。そこに生み出されるのは無意味な死。
二つ目。
永田洋子役の並木愛枝が怖い。
暗がりから他の女性たちの行動を監視。
彼女の他女性への感情(嫉妬?)が凄絶なリンチに発展したと感じられる描き方。
でも本当にそうだったのだろうか?
リーダーが森恒夫と永田洋子だったからあんなことになったのだろうか?
彼らふたりに責任の多くはあるだろう。
最後に加藤元久が「俺たちは勇気がなかった。」と叫ぶ。
(史実ではなく演出とのこと)
戦前も戦後も、声の大きな者に付和雷同するのは日本国民の特質だなとあらためて感じた。
危険である。
三つ目。
鉄球が一度も出てこなかった。
いつになったら鉄球が登場するんだと思って見ていたが最後まで出てこなかった。
若松監督は、事件を権力の側から描くのは最低と言う。
権力の象徴(?)の鉄球が出てこないのは印象的。
あさま山荘にたてこもった5人の視点で描くことで今までにない視点が示されたことに意義がある。
機動隊のすさまじい攻撃がよくわかった。
森恒夫は獄中で自殺し、永田洋子はいまだに収監されているとのこと。
全然知らなかったけど、好対照な身の処し方である。
(いつも通り)理想や正義には乏しいけど、金勘定に終始して平和な日本のありがたさを感じた。
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