おもかげ

おもかげ@ユーロライブ
おもかげ.jpg
(C) Manolo Pavon
製作年:2019年
製作国:スペイン/フランス
英題:Madre
日本公開:2020年10月23日
上映時間:2時間9分
配給:ハピネット

監督・脚本☆ロドリゴ・ソロゴイェン

キャスト
エレナ☆マルト・ニエト
ジャン☆ジュール・ポリエ
ヨセバ☆アレックス・ブレンデミュール
レア☆アンヌ・コンシニ
グレゴリー☆フレデリック・ピエロ
ラモン☆ラウール・プリエト

【あらすじ】
元夫と旅行中の息子から電話を受けたエレナ(マルタ・ニエト)は、息子が一人で海辺に取り残されていることを知るが、それがわが子の声を聞いた最後の会話となる。10年後、息子が失踪した海辺のレストランで働くエレナは、息子によく似たフランス人の少年ジャン(ジュール・ポリエ)と出会う。それ以来ジャンは彼女の元を度々訪れるようになるが、彼らの関係は周囲に混乱を巻き起こしていく。

【感想】
ドヴラーフト以来3ヶ月ぶりの試写イベントを前回と同じユーロライブで観劇。
開場は開演の1時間まえ。
ひとりずつ検温、手指消毒後、チェックシート記入の上入場が許可された。
病院の入場よりチェックがきびしい(笑)
座席は前後左右1席空けの使用率50%だった。
ここまでやれば(そこまでやらなくても)安全だと思います。

上映前に、奥浜レイラさんと精神科医名越康文さんのトーク。
主演のマルタ・ニエトが第76回ベネチア国際映画祭オリゾンティ部門の最優秀女優賞を獲得し、第91回アカデミー賞短編実写映画賞にノミネートされた短編がベース。
短編作品のその後を同監督が描いた。
なんて説明があったけどなんにも知らずに観に来ている。
エレナは大きな喪失(6才の息子の失踪)で時間がストップしている。
そういう状態が俗に言うトラウマなんて話を名越さんがする。
彼によると「世界は喪ったものでまわっている」なんだそうで、この映画にぴったり当てはまると言っていた。
トークでも言っていたが、映画の冒頭15分が短編映画部分。
息子のイヴァンからかかってきた、お父さんがどこかへ行ってしまって海岸で独りぼっち。
から始まり、男が登場。
イヴァンは隠れるが結局何者かに連れ去られてしまう。
映像は電話しているエレナだけで息子は声だけ。
それでこんな怒涛の展開を描くのはすごい。
まさに息もつかせぬ勢い。
ベネチア国際映画祭で主演女優賞をとっただけのことはある。
が、彼女の演技のすごさはこのあとさらに発揮される。

事件の解題はいっさいなく、10年後のエレナの話となる。
彼女は息子が失踪したフランスの海岸で、レストランの店長をしている。
恋人はいるが、10年たってもトラウマから抜け出せず新たなスタートは切れない。
そこで、パリから来ていたジャンと出会う。
彼女がひかれたのはトラウマとなっている息子のおもかげをみたからだ。
ジャンのあとをつけるエレナは、彼が両親と兄弟がいる家族の一員であることを知る。
そして、ジャンはエレナがあとを付けてきたのを悟り、彼女のレストランを客として訪れるのである。
ジャンを演じたのはジュール・ポリエ。
名越さんは、きっとこのキャスティングは「ベニスに死す」を意識しているに違いないと言っていた。
フランスの美少年である。

エレナとしては複雑だったと思う。
いくら息子の面影を宿しているとはいえ別人で息子の代わりにはならない。
それでも、ふっきれてないから、ついおつきあいしてしまうのはしかたあるまい。
一方恋人のヨセバは包容力のあるいい人だ。
家族に合わせたり、同居を強引に進めたりエレナが大好き。
さてどうしたらいいんだという話である。
ついでにもうひとり、元夫のラモン。
こちらもいい人だ。
エレナに会いに来て近況報告。
ようやくトラウマをのりこえて恋人との間に8か月の息子をさずかったことを告げる。
と、エレナは逆上してラモンをののしり二度と近づくなとまで言ってしまう。

で、最後に事件が起き、ラストをむかえるわけである。
色々な解釈ができ、その後の予想もいろいろできる。
こういうのはあまり日本人むけではない。
なにかと説明過多で明確な決着が好まれる邦画とは全然ちがう。
オレは自分なりの解釈をしたが、ここには書かない。
恋人や配偶者、親子で観て、いろいろ話ができる良い映画である。

ちなみに原題「Madre」はスペイン語で母。
邦題「おもかげ」はなかなか良いつけかただと思いました。

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