詰将棋雑談/中山芳樹氏⑪
次の出題は学校ではなく詰将棋デパート。
2012年9月号
詰将棋デパート⑤ 入選14回 南あわじ市 中山芳樹氏

この作品も攻め駒が遠く角さんのおっしゃるドローン攻撃が必要に見える初形
8一龍 は 5二玉 とかわされて詰まない。
4二歩成 は 同玉、5三桂 も 5二玉 とかわされて詰まない。
結局 3三桂 と打つしかないのは割とたやすく判明するが頼りない攻めである。
受けは色々ある。
3一玉 は 2二歩成 までだから検討が必要な逃げは3か所。
① 3二玉
2二歩成 4三玉 4五飛 5二玉 4一飛成 6二玉 5四桂 6三玉 5五桂 7二玉 6四桂 まで
② 5一玉
5五飛 5二銀※ 6三桂 6一玉 7一桂成 同玉 7三龍 7二金 8三桂 8一玉 9三桂 9二玉 9一桂成 同玉 9二歩 同玉 7二龍 9三玉 8三金 9四玉 7四龍 まで
③ 5二玉 以外は詰むことがわかったので 5二玉 以下を掘り下げる。

この局面で、6四桂 は 6三玉、4四桂 も 4三玉 と桂頭に逃げられて詰まない。
8二龍 も 4三玉 と逃げられて詰まない。
5四龍 は 5三に香以外の合駒、または 6一玉 で詰まない。
残る王手は 5五飛 だけだ。

まずはかわす手
① 4三玉
3五桂 3三玉 5三飛成 3二玉 8二龍 3一玉 2二歩成 4一玉 3二と まで
② 6一玉
5三桂 5二玉 4二歩成 同玉 4一桂左成 3三玉 4五桂 3二玉 3四龍 4一玉 4三龍 4二銀 3三桂打 3一玉 5一飛成 同銀 4一龍 まで
③ 6二玉
6四龍 6三金 5三飛成 7一玉 7三龍 7二角 5一龍 6一歩 8三桂 8一玉 6一龍 同角 7一桂成 9一玉 9二歩 同玉 8四桂 9一玉 9三龍 まで
④ 6三玉
7五桂 6二玉 6四龍 7二玉 5二飛成 8一玉 9三桂 9一玉 8三桂不成 まで
かわす手が詰むことはわかった。
つぎに5三に合駒する手を検討する
① 5三角
同飛成 同玉 4五桂 5二玉 4一角 6一玉 8一龍 7一香 5三桂打 6二玉 5四桂 5一玉 4二歩成 まで
② 5三金
同飛成 同玉 6五桂 4三玉 3五桂 4二玉 5三金 5一玉 6三桂 6一玉 8一龍 まで
③ 5三銀
同飛成 同玉 6五桂 4三玉 3五桂 4二玉 4五桂 3二玉 8二龍 4二金 3三銀 3一玉 4二龍 2一玉 2二歩成 まで
④ 5三香(作意?)
切られても詰まない合駒は香だけ。
たぶんこれが作意だろうと推定できる。
もうひとつ5四への中合は同龍で簡単に詰む。

5三香以下を検討する。
6四桂、4四桂 はいずれも 4三玉 で詰まない。
8二龍 も 4三玉 で全然詰まないので 4二歩成 とするしかない。
逃げる手は3種類
① 6一玉
5一と 6二玉 5三飛成 同玉 4五桂 6二玉 6五香 6四歩 同香 7二玉 6三香成 同玉 5五桂 6二玉 8二龍 7二香 5二と 同玉 7二龍 6二歩 5三香 4二玉 6二龍 3一玉 2二歩成 まで
② 6二玉
6五飛 6四歩 同飛 7二玉 6三飛成 同玉 7五桂 6二玉 7四桂 同歩 8二龍 7二香6三歩 6一玉 7三桂 同香 5二と まで
③ 6三玉
7五桂 7二玉 6四桂 7一玉 6三桂打 6一玉 5二と まで
4二歩成 に逃げる手は詰むことがわかった。
したがって応手は同玉となる。
同玉 に対しては 4四龍 と回るしかない。

4四龍 への応手も多岐にわたる。
① 4三歩・香・銀・
5三飛成 3二玉 4三龍寄 2三玉 2一桂成 1二玉 3二龍 1三玉 2二龍 まで
② 4三金・角
5三飛成 3一玉 5一龍 3二玉 2一龍 4二玉 4一龍 まで
③ 5一玉・5二玉
5三龍 6一玉 5二龍 7一玉 8三桂 8一玉 9三桂 まで
④ 3二玉(作意と推定)

4四龍 には 3二玉 と逃げるほかなく、以下 2二歩成 同玉 2一桂成 同玉 1一歩成 同玉 1五飛 と進行する。

この局面での受けがまたややこしい。
① 2一玉
3三桂 2二玉 2三歩 同玉 3五桂 2二玉 3四桂 3一玉 4二龍 まで
② 2二玉
1四桂 3一玉 3二歩 同玉 2四桂 3一玉 2三桂 2一玉 4一龍 まで
かわす手は詰むので合駒を検討する。
上記 2二玉 の変化で 1四桂 と打たれる手を防いで 1四歩 と中合する手がある。
これを 同飛 と取ると 1二歩 と合駒されて詰まない。
そこで 1四歩 は 同龍 と取ることになる。
以下 2二玉 1三龍 3一玉 3五飛 4一玉 4三龍 5一玉 3一飛成 6二玉 4二龍引 6三玉 5三龍引 7四玉 7三龍 8五玉 4五龍 9六玉 7六龍 9七玉 9九香 8八玉 8五龍右 9九玉 7九龍 9八玉 8八龍 まで
色々な詰め方があるので変化と分かるがあまり味は良くない変化だ。
合駒は6種類ある。
① 1二角・1二銀・1二歩
2三桂 2一玉 2二歩 同玉 1四桂 1三玉 2五桂 2三玉 3三龍 まで
② 1二金
2三桂 2一玉 2二歩 同玉 1四桂 2三玉 2五飛 3二玉 3五飛 2一玉 4一龍 まで
③ 1二桂
2三桂 2一玉 2二歩 同玉 1三飛成 同玉 2五桂 2三玉 3三桂成 1三玉 2五桂 まで
④ 1二香(作意と推定)

1二香 と合駒されると 1四桂 が打てず別の攻めを繰り出す必要がある。
2三桂 2二玉 1二飛成 同玉 1五香

1五香(1五香以遠ならどこでも可)に対する受けも色々ある。
1三への合駒は、例えば 歩 を合すると 同香成 同玉 2五桂 1二玉 1三歩 2三玉 3三桂成 1三玉 1四歩 1二玉 4二龍 1一玉 2二成桂 で詰む。
他の合駒も 同香成 として詰む。
1四歩 などの中合は 同香 で無効。
よって玉は逃げることになる。
① 2一玉
1一桂成 3一玉 2三桂 3二玉 3三歩 2三玉 3五桂 2二玉 4二龍 まで
② 2三玉
3五桂 2二玉 3四桂 2一玉 2二歩 3一玉 4二龍 まで
③ 2二玉(作意)
1四桂 2一玉 3三桂 1二玉 1一桂成 1三玉 2二桂成 同玉 2一桂成 3二玉 3三歩 2二成桂 同玉 1二成桂 3一玉 2一成桂 同玉 4一龍 2二玉 3二龍 まで43手詰

最後は桂をすべて捌き切ってきれいな詰上がり。
この作品もドローン攻撃から合駒と中合が飛び出して最後はきれいに詰みあがる作者らしい作品。
作者「狙い、飛歩図式(トイツ図式)+持ゴマ桂一式。
担当濱川さんのコメントは以下の通り。
☆持駒4桂。何か趣向手順かと思いきや実はかなり読みが必要。
☆33桂から55飛は何となくやってはみるが変化が厄介。ひたすら読むしかない。
☆歩の成捨てで1筋に追い込むのはやや趣向的か。ここから捌きに入る。
☆21手目の香が14桂を見据えて15香以遠なのは直観的に分かるが1歩の差で割り切れているのは巧みである。
☆以降はべたべたと桂を貼り付け、そして成って捨てて跡かたも無く消えていく。
☆前後半で雰囲気に差があるが作者の意気込みを感じる力作。
本作の解答者は32名で誤解0無解14 正解18名
デパート出題のため評価点が無いのが残念。
今川氏「持駒4桂の趣向局。序、読み手より応手の方が難しい。店長、【代わりに逃げて】と頼みたくなる。巧みに桂を捨てての収束で、前半の苦労も消えて気分は爽快」
占魚亭氏「軽快な捌きがとても気持ち良いです」
永島氏「2枚飛車と桂馬というのは意外に相性が悪いのか、序盤からずっと変化等が面倒な展開が続きますね。デパートらしからぬ煩雑でした」
須川氏「相変わらず難しい。変化を全部読み切れない」
⇒須川さんは多分全部読み切っていると思います
担当コメントと解答者の評で言い尽くされている。
変化は多くてたいへんだが、デパートの場合詰手数が提示されているので作意の推定がしやすい。
学校で出題されていたらもっと誤無解者が多くなり不評も増えたことだろう(笑)
To be continued ⑫
2012年9月号
詰将棋デパート⑤ 入選14回 南あわじ市 中山芳樹氏

この作品も攻め駒が遠く角さんのおっしゃるドローン攻撃が必要に見える初形
8一龍 は 5二玉 とかわされて詰まない。
4二歩成 は 同玉、5三桂 も 5二玉 とかわされて詰まない。
結局 3三桂 と打つしかないのは割とたやすく判明するが頼りない攻めである。
受けは色々ある。
3一玉 は 2二歩成 までだから検討が必要な逃げは3か所。
① 3二玉
2二歩成 4三玉 4五飛 5二玉 4一飛成 6二玉 5四桂 6三玉 5五桂 7二玉 6四桂 まで
② 5一玉
5五飛 5二銀※ 6三桂 6一玉 7一桂成 同玉 7三龍 7二金 8三桂 8一玉 9三桂 9二玉 9一桂成 同玉 9二歩 同玉 7二龍 9三玉 8三金 9四玉 7四龍 まで
③ 5二玉 以外は詰むことがわかったので 5二玉 以下を掘り下げる。

この局面で、6四桂 は 6三玉、4四桂 も 4三玉 と桂頭に逃げられて詰まない。
8二龍 も 4三玉 と逃げられて詰まない。
5四龍 は 5三に香以外の合駒、または 6一玉 で詰まない。
残る王手は 5五飛 だけだ。

まずはかわす手
① 4三玉
3五桂 3三玉 5三飛成 3二玉 8二龍 3一玉 2二歩成 4一玉 3二と まで
② 6一玉
5三桂 5二玉 4二歩成 同玉 4一桂左成 3三玉 4五桂 3二玉 3四龍 4一玉 4三龍 4二銀 3三桂打 3一玉 5一飛成 同銀 4一龍 まで
③ 6二玉
6四龍 6三金 5三飛成 7一玉 7三龍 7二角 5一龍 6一歩 8三桂 8一玉 6一龍 同角 7一桂成 9一玉 9二歩 同玉 8四桂 9一玉 9三龍 まで
④ 6三玉
7五桂 6二玉 6四龍 7二玉 5二飛成 8一玉 9三桂 9一玉 8三桂不成 まで
かわす手が詰むことはわかった。
つぎに5三に合駒する手を検討する
① 5三角
同飛成 同玉 4五桂 5二玉 4一角 6一玉 8一龍 7一香 5三桂打 6二玉 5四桂 5一玉 4二歩成 まで
② 5三金
同飛成 同玉 6五桂 4三玉 3五桂 4二玉 5三金 5一玉 6三桂 6一玉 8一龍 まで
③ 5三銀
同飛成 同玉 6五桂 4三玉 3五桂 4二玉 4五桂 3二玉 8二龍 4二金 3三銀 3一玉 4二龍 2一玉 2二歩成 まで
④ 5三香(作意?)
切られても詰まない合駒は香だけ。
たぶんこれが作意だろうと推定できる。
もうひとつ5四への中合は同龍で簡単に詰む。

5三香以下を検討する。
6四桂、4四桂 はいずれも 4三玉 で詰まない。
8二龍 も 4三玉 で全然詰まないので 4二歩成 とするしかない。
逃げる手は3種類
① 6一玉
5一と 6二玉 5三飛成 同玉 4五桂 6二玉 6五香 6四歩 同香 7二玉 6三香成 同玉 5五桂 6二玉 8二龍 7二香 5二と 同玉 7二龍 6二歩 5三香 4二玉 6二龍 3一玉 2二歩成 まで
② 6二玉
6五飛 6四歩 同飛 7二玉 6三飛成 同玉 7五桂 6二玉 7四桂 同歩 8二龍 7二香6三歩 6一玉 7三桂 同香 5二と まで
③ 6三玉
7五桂 7二玉 6四桂 7一玉 6三桂打 6一玉 5二と まで
4二歩成 に逃げる手は詰むことがわかった。
したがって応手は同玉となる。
同玉 に対しては 4四龍 と回るしかない。

4四龍 への応手も多岐にわたる。
① 4三歩・香・銀・
5三飛成 3二玉 4三龍寄 2三玉 2一桂成 1二玉 3二龍 1三玉 2二龍 まで
② 4三金・角
5三飛成 3一玉 5一龍 3二玉 2一龍 4二玉 4一龍 まで
③ 5一玉・5二玉
5三龍 6一玉 5二龍 7一玉 8三桂 8一玉 9三桂 まで
④ 3二玉(作意と推定)

4四龍 には 3二玉 と逃げるほかなく、以下 2二歩成 同玉 2一桂成 同玉 1一歩成 同玉 1五飛 と進行する。

この局面での受けがまたややこしい。
① 2一玉
3三桂 2二玉 2三歩 同玉 3五桂 2二玉 3四桂 3一玉 4二龍 まで
② 2二玉
1四桂 3一玉 3二歩 同玉 2四桂 3一玉 2三桂 2一玉 4一龍 まで
かわす手は詰むので合駒を検討する。
上記 2二玉 の変化で 1四桂 と打たれる手を防いで 1四歩 と中合する手がある。
これを 同飛 と取ると 1二歩 と合駒されて詰まない。
そこで 1四歩 は 同龍 と取ることになる。
以下 2二玉 1三龍 3一玉 3五飛 4一玉 4三龍 5一玉 3一飛成 6二玉 4二龍引 6三玉 5三龍引 7四玉 7三龍 8五玉 4五龍 9六玉 7六龍 9七玉 9九香 8八玉 8五龍右 9九玉 7九龍 9八玉 8八龍 まで
色々な詰め方があるので変化と分かるがあまり味は良くない変化だ。
合駒は6種類ある。
① 1二角・1二銀・1二歩
2三桂 2一玉 2二歩 同玉 1四桂 1三玉 2五桂 2三玉 3三龍 まで
② 1二金
2三桂 2一玉 2二歩 同玉 1四桂 2三玉 2五飛 3二玉 3五飛 2一玉 4一龍 まで
③ 1二桂
2三桂 2一玉 2二歩 同玉 1三飛成 同玉 2五桂 2三玉 3三桂成 1三玉 2五桂 まで
④ 1二香(作意と推定)

1二香 と合駒されると 1四桂 が打てず別の攻めを繰り出す必要がある。
2三桂 2二玉 1二飛成 同玉 1五香

1五香(1五香以遠ならどこでも可)に対する受けも色々ある。
1三への合駒は、例えば 歩 を合すると 同香成 同玉 2五桂 1二玉 1三歩 2三玉 3三桂成 1三玉 1四歩 1二玉 4二龍 1一玉 2二成桂 で詰む。
他の合駒も 同香成 として詰む。
1四歩 などの中合は 同香 で無効。
よって玉は逃げることになる。
① 2一玉
1一桂成 3一玉 2三桂 3二玉 3三歩 2三玉 3五桂 2二玉 4二龍 まで
② 2三玉
3五桂 2二玉 3四桂 2一玉 2二歩 3一玉 4二龍 まで
③ 2二玉(作意)
1四桂 2一玉 3三桂 1二玉 1一桂成 1三玉 2二桂成 同玉 2一桂成 3二玉 3三歩 2二成桂 同玉 1二成桂 3一玉 2一成桂 同玉 4一龍 2二玉 3二龍 まで43手詰

最後は桂をすべて捌き切ってきれいな詰上がり。
この作品もドローン攻撃から合駒と中合が飛び出して最後はきれいに詰みあがる作者らしい作品。
作者「狙い、飛歩図式(トイツ図式)+持ゴマ桂一式。
担当濱川さんのコメントは以下の通り。
☆持駒4桂。何か趣向手順かと思いきや実はかなり読みが必要。
☆33桂から55飛は何となくやってはみるが変化が厄介。ひたすら読むしかない。
☆歩の成捨てで1筋に追い込むのはやや趣向的か。ここから捌きに入る。
☆21手目の香が14桂を見据えて15香以遠なのは直観的に分かるが1歩の差で割り切れているのは巧みである。
☆以降はべたべたと桂を貼り付け、そして成って捨てて跡かたも無く消えていく。
☆前後半で雰囲気に差があるが作者の意気込みを感じる力作。
本作の解答者は32名で誤解0無解14 正解18名
デパート出題のため評価点が無いのが残念。
今川氏「持駒4桂の趣向局。序、読み手より応手の方が難しい。店長、【代わりに逃げて】と頼みたくなる。巧みに桂を捨てての収束で、前半の苦労も消えて気分は爽快」
占魚亭氏「軽快な捌きがとても気持ち良いです」
永島氏「2枚飛車と桂馬というのは意外に相性が悪いのか、序盤からずっと変化等が面倒な展開が続きますね。デパートらしからぬ煩雑でした」
須川氏「相変わらず難しい。変化を全部読み切れない」
⇒須川さんは多分全部読み切っていると思います
担当コメントと解答者の評で言い尽くされている。
変化は多くてたいへんだが、デパートの場合詰手数が提示されているので作意の推定がしやすい。
学校で出題されていたらもっと誤無解者が多くなり不評も増えたことだろう(笑)
To be continued ⑫
この記事へのコメント
初めて心が通じたような気がします(笑)。
初めて心が通じたような気がするとのこと。
良かったです((笑))