
制作年:2022
制作国:イスラエル/アメリカ
日本公開:2023年9月8日
英題:JUNE ZERO
上映時間:1時間45分
配給:東京テアトル
監督・脚本☆ジェイク・パルトロー
キャスト
ダヴィッド☆ノアム・オヴァディア
ゼブコ社長☆ツァヒ・グラッド
ヤネク☆アミ・スモラチク
ハイム☆ヨアヴ・レヴィ
ミハ☆トム・ハジ
【あらすじ】
1961年、ナチスドイツの戦犯アドルフ・アイヒマンの数か月に及ぶ裁判がイスラエルで行われ、死刑の判決が下される。一家でイスラエルにやって来たリビア移民のダヴィッド(ノアム・オヴァディア)は、授業を中断してラジオに聞き入る教師と級友らを目の当たりにする。彼はゼブコ社長(ツァヒ・グラッド)のもと、町はずれの鉄工所で掃除の仕事をすることになるが、そこにアイヒマンを火葬する焼却炉の設計プロジェクトが持ち込まれる。
【感想】
物語の軸は3本立てだ。
映画の冒頭は、ダヴィッドが弟と時計を盗んで逃げ、弟がケガをするシーン。
これがどうアイヒマンとつながるのか?と思った。
父親に連れられてダヴィッドは街はずれの鉄工所に行く。
そこでゼブコ社長と会い、タンクの中にもぐって中を掃除する仕事をえる。
ここでも彼はゼブコ社長の記念品の懐中時計を盗み出す。
この時計が何か?ひとつのカギになっている。
その後ゼブコの戦友で刑務官のハイム(ヨアブ・レビ)が設計図片手に極秘プロジェクトを持ち込んでくる。
設計図はアウシュビッツで使われたトプフ商会の小型焼却炉。
燃やすのはアイヒマン。工員たちに動揺が広がる——。
アイヒマンを警護するハイムの描写が二つ目の軸。
憎っくきアイヒマンに対する複雑な感情が活写される。
アイヒマンは妻と会うため散髪を希望。
いつもの床屋ではないトルコ人の床屋を入れる。
ハイムの緊張感が半端でないことが伝わる。
もうひとつはアウシュビッツのサバイバーであるミハの話。
ポーランドのゲットーで観光客に体験談を話して観光ツアーに仕立て上げる企てに参加。
ユダヤ教会の女性に、つらい体験を広めるようなツアーには参加しないよう説得される。
その場で話したミハの体験はともかくその後の話が胸にのこる。
いわく、生き延びた後イスラエルに入国するためにその話を入国管理官にしたら、嘘だと信じてもらえなかったというのだ。
狂犬アイヒマンを処刑して火葬して遺灰を地中海にバラまいて万々歳!
とてもそんな単純な映画ではない。
後日譚含め色々な含意のある作品。
ゼブコ社長の記念品の懐中時計はイスラエル独立闘争で手に入れた曰く付きの戦利品。
パレスチナを統治していたイギリス軍兵士のもの。
日本人はユダヤ人とイギリスが戦ったことも知らないであろう。
勉強になった。
サイトに掲載されている著名人のコメントは下記の通り。
「ヒットラーのナチスが何故ここまで圧倒的な支持を得る事になったのか。 世論の作られ方の怖さをつくづく感じる。」
感じるだけではダメで、日本でもくだらない世論が作られないようにする必要がある。
首相経験者が台湾に行って「戦争する覚悟」なんて大馬鹿なこと放言してきたあげく、狙い通りなんて抜かしてしまう。
いつでもまた先の大戦のようなバカなことを仕出かしかねない。
徹底して反対することが大事である。
臼杵陽/日本女子大学教授
死刑制度のないイスラエルにおいて超法規的に行われたアイヒマン処刑後の措置の問題を映画の中心に捉えたことは極めて実験的だ。『ハンナ・アーレント』『スペシャリスト 自覚なき殺戮者』『アイヒマンを追え!』といった映画も実験的な試みの映画であったが、これまでの作品以上に衝撃的だと思う。
木村草太/憲法学者
なぜ、人は記憶を語ろうとするのか(あるいは、語ろうとしないのか)?
なぜ、人はその語りに耳を傾けるのか(あるいは、耳を閉ざすのか)?
小林エリカ/作家・マンガ家
大量虐殺に関わったひとりの人間を、処刑し遺体を火葬するために奔走するイスラエルの人々もまたひとりひとりの人間なのだというあたりまえに、目を見ひらかされる。「歴史的」な瞬間のまわりには、ときにスラップスティックのようでさえある複雑な現実が、存在しているのかもしれない。
今日マチ子/漫画家
辛い記憶は忘れたほうがいいと思っていた。かつての戦争の敵を「消す」ために奔走する人々。でも、煙となっても記憶は残る。忘れないことは生きてきたことの肯定であり、私たちを支えているのだ。
渋谷哲也/日本大学文理学部教授/ドイツ映画研究
アイヒマン裁判に関与した周辺人物に注目することで、驚くほど錯綜した歴史と真実の関係が明らかになる。イスラエルとユダヤ人の多様性をもっと掘り下げて考えたい。
高橋秀寿/歴史社会学者
巨悪の政治家ではなく、有能な官僚だった殺人鬼アイヒマン。それゆえにホロコーストの厄介な落し子となった彼の不気味な影を描くこの映画は、イスラエルだけではなく、戦後世界全体が抱える問題をあぶり出す――私たちもアイヒマンではないのか?
田原総一朗/ジャーナリスト
アイヒマンの処刑はあれだけのユダヤ人を殺害したのだから当然と言える。 それにしてもヒットラーのナチスが何故ここまで圧倒的な支持を得る事になったのか。 世論の作られ方の怖さをつくづく感じる。
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